炭素鋼とは?特徴や種類・用途などの基礎知識を徹底解説
金属材料の中で最も使われることが多い材料である「鉄」ですが、その種類は多岐にわたります。 そんな鉄の中でも最も使われる比率の高い「炭素鋼」の特徴や種類・用途などについて、本記事では解説します。
目次
1.炭素鋼とは?
「炭素鋼」は、鉄に炭素を加えた合金で、炭素含有量が0.02%~2.14%までの鉄鋼材を指します。
炭素鋼は安く製造することができ、熱処理を加えることによって性質を変化させることができるため、ボルトやナットなどの機械部品、自動車、船舶、飛行機などの機械、ビルやタンカーなどの構造物等、幅広く使用されている材料です。
2.炭素鋼の特徴
炭素鋼の炭素含有量
「炭素鋼」は、鉄に炭素を加えた鉄鋼材料で、炭素の含有量によって鉄の性質が変化するといっても過言ではありません。
またJIS規格により、含有する炭素量によって純鉄、鋼鉄、鉄の3つに分類されます。
JIS呼称:炭素含有量
・純鉄: 0.02%未満
・鋼鉄:0.02%~2.14%
・鉄 :2.14%~6.7%
炭素鋼の組成・成分
炭素鋼の鋼鉄中でも、炭素量により低炭素鋼(炭素量0.02%~0.25%)、中炭素鋼(炭素量0.25%~0.6%)、高炭素鋼(炭素量0.6%~2.14%)に分類されます。
また、主成分の鉄と炭素以外に、ケイ素(Si)・マンガン(Mn)・リン(P)・硫黄(S)などを含みます。これらは意図的に添加されたものではなく、多くは製造時に残った物です。意図的に加えて基準値を超えた場合は、合金鋼に分類されます。
炭素鋼の強度
炭素鋼は、炭素の含有量が高ければ高いほど鋼としての硬度は上がり変形に強くなりますが、同時にもろくもなり強い衝撃を受けると砕けやすくなってしまいます。
なお、純粋な鉄は柔らかすぎて実用的ではなく、炭素を加えることで硬度と強度のバランスを確保しています。
また、炭素の含有量のほかに、熱処理を施すことにより大きく性質を変える事もできます。
炭素鋼の代表的な熱処理としては、焼なまし、焼ならし、焼入れ、焼戻しがあります。
3.炭素鋼の種類と記号について
鋼の材料記号は、原則S(Steel)から始まり、炭素含有量や引張強さなどの数値と合わせて表記されます。
SPC材・SS材・S-C材・SK材の大きく4つの種類があります。
SPC材(冷間圧延鋼板)
SPC材とはSteel Plate Coldの略で、冷間圧延鋼板を意味します。炭素含有量が0.1%未満の低炭素鋼で、炭素鋼の中で最も軟らかな材料です。
丸棒や角棒の形状はなく、材質は0.4~3.2mmの薄板のみで、プレス加工しやすい点が特徴的です。
材質は一般用のSPCC、絞り用のSPCD、深絞り用のSPCEの3種類があります。
柔らかく伸びやすいため加工性や成形性に優れており曲げ加工などに適していますが、強度面では他の鋼材には劣るため、一定以上の強度が必要な部材には向いていません。
また、非常に酸化しやすいため、加工後は塗装やメッキが必要です。
SS材(一般構造用圧延鋼材)
SS材とはSteel Structureの略で、一般構造用圧延鋼材を意味します。炭素の含有量は0.1~0.3%で、低炭素鋼から中炭素鋼の鋼材です。
SS材の種類はSS400とSS490の2つです。SSの後につく400や490という数字は、鋼の引っ張り強さの最小保証値(MPa)を指します。
比較的安価かつ加工性と溶接性が良いため鉄鋼材料として幅広い分野で使用されていますが、S-C材と比べると炭素含有量が少ないため強度や硬度は劣ります。
S-C材(機械構造用炭素鋼鋼材)
S-C材とはS(Steel)とC(Carbon)の略で、機械構造用炭素鋼鋼材を意味します。S-C材はSS材についでよく使われる鋼材です。炭素の含有量は0.1~0.6%で低炭素鋼から中炭素鋼の鋼材です。
代表的な鋼種はS45CやS50Cなどで、炭素含有量をSとCの間に挟んで表記します。
S-C材はSS材に比べて機械的強度が高く、熱処理による特性変化にも優れていますが、その反面、冷却によってひび割れが発生する、溶接性の面で劣るといったデメリットもあります。
精密機械部品や、強度が必要な部品に使用されることが多い鋼材です。
SK材(炭素鋼鋼材)
SK材とはS(Steel)とK(Kougu)の略で、炭素工具鋼鋼材を意味します。炭素含有量が0.6~2.14%の高炭素鋼です。
SとKの後に炭素含有比率を示す2桁の数字が続きます。例えばSK95だと、0.95%の炭素が含有されている、という意味です。
SK材は硬さや耐摩耗性に優れた素材ですが、熱処理を行う際に一定以上の高温になると硬度が低下してしまうといった特徴があります。
刃物等の工具材として使用されることが多い鋼材です。
4.代表的な炭素鋼とその用途
最も汎用的に使用される鋼「SS400」
SS400は鉄のなかでも比較的安価で入手しやすく、溶接や切削などの加工がしやすいため汎用性が高いのが特徴です。
板材の状態での流通も多く、板金加工やレーザーカットなども行えますが、焼き入れはできません。また錆びやすい素材なのでめっきや黒染めなどの防錆処理が必要です。
SS400は橋や船などの構造材に使われるほか、大型の機械や車両など、機械分野から建築分野まで幅広く使われています。
鉄や鋼で何かを作ろうと思った際に多くの方が一番最初に思い浮かべる材料であり、広く一般的に使用されている素材です。
SS400と並んでよく使われる「S45C」
S45CはSS400と並んで、非常によく使用される材料です。SC材の中では最もポピュラーな素材であり、焼き入れなどの熱処理によって耐摩耗性や硬さなどをコントロールできるため汎用性が高いのが特徴です。
逆に、熱により性質を変えやすいため、熱を使う溶接には向いていません。また、錆びやすいため、油の塗布や塗装などの防錆処理が必要になります。
歯車のような耐久性を求める機械部品に特に多く使われます。
まとめ
炭素鋼について、まとめると以下がポイントです。
・「炭素鋼」は、鉄に炭素を加えた合金で、炭素含有量が0.02%~2.14%までの鉄鋼材
・炭素の含有量が高ければ高いほど硬度は上がり変形に強くなるが、同時にもろくもなる
・炭素量の含有量によって低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼に分類
・炭素鋼にはSP材、SS材、S-C材、SK材などがある
・汎用性が高く良く使用されるのは、「SS400」「S45C」
幅広い用途がある炭素鋼は鋼材を代表する素材です。材料の特性・コスト・加工性など理解を深めましょう。
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